神楽坂宗司×宗像廉
ほろ酔いKISS
ただただ宗くんと廉くんがキスしてるだけのお話。
ほろ酔い、なんて入ってますが、NOアルコールです。
「廉」
普段自分を呼ぶ声とは声色の違うそれに、思わず身体を固くしてしまう。
そんなこと、お見通しである自分の恋人は、宥めるように頭をひと撫でしてそのまま後頭部へその手を回した。
「そ、」
満足に名前を呼び返すこともさせてもらえないまま、お互いの唇が重なる。やんわり、でもこの行為を実感させるように合わさった唇は、程なくして離れた。
これが真昼間だとか、翌日の朝から予定が入っている夜だとかなら、甘い空気の中でもじゃれる様な触れ合いに留まっていただろう。ただ、今はもう夜も更けようとする時間帯で、おまけに明日は二人とも一日オフで。そうなればこの先の展開を予想することは、廉にとって容易かった。
そのくらい、この関係になってからも月日を重ねている。
廉の予想通り、そう間も空けずにもう一度宗司の顔が近づいて二人の間の距離はゼロになった。今度は合わさるだけに留まらず、宗司の舌が廉の唇の割れ目をなぞる。それに促されておずおずと開けば、ぬるりと舌が侵入してきた。
何度も交わしている行為だけれど、この瞬間は未だに慣れなくて、どうしても小さく身体が跳ねてしまう。その度、「大丈夫だ」と言わんばかりに後頭部にある彼の手が、廉の頭を撫でるのはもうお決まりだった。
「ふ……んん、……っ」
丁寧に咥内を愛撫されて、徐々に思考が溶けていくにつれ身体の力が抜けていく。
自分はどうやって息をしていたのだろう。
息苦しさが混ざり始めると縋るように宗司の方に手は伸びて、彼の服をぎゅっと掴む。快楽と酸欠に意識が霞み始めた頃、ようやく長い口づけから解放されたのだった。
「は、ぁ……」
「悪い、やり過ぎた」
解放されたその口は足りない酸素を必死に取り込もうとする。却って上手くいかないのに、呼吸をうまくコントロールできない。宗司は廉を抱き寄せて頭と背中を撫でながら、「ゆっくりでいいから」と言葉を繰り返した。
「……落ち着いたか?」
「う、ん……」
そう間もないうちに廉の呼吸は落ち着きを取り戻したが、抜けきらない倦怠感に起き上がるのは億劫で、恋人へ身体を預けたままにする。正確にはそれを口実に、甘えることを選んだだけなのだけど。
「廉、いいか?」
いつも聞かれる問い掛け。
それは、彼が自分を大切にしてくれて、自分の気持ちを尊重してくれてのものだと分かってはいるけれど、ここまでしておいて今更引けるのかと少し試したくもなる。
が、自分が否の答えを返せば本当に今日はこのままお開きなんてこともこの幼馴染なら十分に有り得るわけで。結局その悪戯心はそっと仕舞って、了承の返事を返した。
「じゃあ、ベッド行くか」
「自分で歩けるから」と抱きかかえようとした宗司の手をやんわり払ってソファーから立ち上がったが、すぐにカクリと膝を折ってしまう。結局、宗司に強制的に抱きかかえられてしまった。
抱えられてしまえば抵抗しても無駄に終わってしまうことはもう経験済みである。大人しく従って宗司の首に腕を回し、そっと擦り寄った。
「なんだ、今日の廉くんは甘えたい気分か?」
「……かも」
「……そうか。じゃあ今日はめいっぱい甘やかしてやる」
揶揄いの言葉に反して素直な返事を返してみると一瞬驚いて宗司が間を空ける。しかし、すぐにクスリと笑みを零すとそっとベッドの上に廉を横にした。見下ろすその瞳の奥にゆらりと欲の色を携えて。
Fin.