神楽坂宗司×宗像廉
夢現の中で
診断メーカー様からのお題より。
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無夜の宗廉へのお題は
・抱きかかえる
です。
まだまだ数は少ないが、それでもぽつりぽつりと入る個人での仕事。
今日の現場は長引いて、おまけにその後、先輩俳優に食事に誘われて。帰寮したのはもう日付を越えた辺りだった。
「ただいまー……って、誰かいるのか?」
「あ、おかえり、ソウ。お疲れさま」
さすがに皆もう寝ているだろうとSOARAのフロアに上がってきてみれば、共有ルームには明かりが点いていて。それに疑問を抱きながら部屋を覗く。そこに居たのは次の仕事の台本らしきものを手に挨拶を返してきた守人だった。
「モリ、まだ起きてたのか?」
「まあね。さすがにこのまま一人寝かせておくのもなぁ、と思って」
でも起こすのも可哀想だし。そう続けながらそっと守人が指差した先にはソファー、とそこで眠る幼馴染。
「……廉?」
「帰って来るの待ってたみたいだよ?」
「今日は遅くなるって連絡したんだがな」
起こさないよう静かにソファーに近づき、眠る廉の顔を覗き込む。その顔は穏やかなもので、あどけないそれに頬が自然と緩んだ。
「明日はオフみたいだし、待っていたかったんじゃないかな」
「……ほんと」
「健気だよね」
宗司の言葉を先読みした守人に視線を向けると、意味深に微笑まれてその笑みをジトリと睨む。
「なんだよ」
「ソウのそういう表情、なかなか見られないから貴重だな、と思ってね」
「どんな顔だよ」
変わらず笑みを浮かべたままの守人にわざとらしく大きくため息を吐いた。その様子にクスクスとひとしきり笑った守人が、それで、と再度口を開く。
「廉はどうするの? 起こす?」
「いや、このまま部屋まで運ぶ。モリ、悪いがドア開けてくれないか、手塞がっちまうから」
「分かった」
廉を軽々と抱き上げた宗司は自室に向かうべく、足を進める。守人も立ち上がってそれに続くと、宗司の自室のドアを開けた。
「じゃあ、ソウ、おやすみ」
「付き合わせて悪かったな。おやすみ」
後ろでドアが閉まる音を聞き届け、改めて廉の顔を見る。そして、その頬にそっと口付けを落とした。
「ありがとな、廉」
その頬がほんのり赤くなったのに気づいて、クスリと笑みを零す。そうして、ベッドの上に下すともう一度頬に口付けてそっと囁いた。
「すぐ戻って来るからいい子で待ってろよ?」
その言葉にピクリと反応した廉にまたクスリと笑みを零してシャワーを浴びてくるべく部屋を後にした。
Fin.