神楽坂宗司×宗像廉

今日の、今の、ひと時に、

宗くんと廉くんのピロートーク。
宗廉の好きなシチュエーションの一つが事後だったり。。

 頭上に心地良さを感じると同時に視界に光を入れる。


「……宗兄?」

「お、起きたか」


 起きてすぐに馴染まない視界の中でも、愛しい人の姿は認識できて。自然とその名を口にすれば、目元に優しくキスが落とされた。


 宗司とこういう関係になってから、行為自体の回数もそれなりに重ねたつもりだけれど、やはり未だに身体は慣れなくて。こうして意識を落としてしまうことは珍しくない。その度に諸々の後処理は宗司が全部済ませ、今のように頭を撫でながら廉の浮上を待ってくれていた。

 申し訳なさはもちろんあるけれど、目が覚めて最初に視界に入れる宗司の表情は、愛しさでいっぱいで。自分は大切にされているのだと、愛されているのだと、実感できるのが嬉しかったりもする。


 本来は行為を受け入れる側用に造られていない身体だから、痛みだとか違和感だとかはやっぱりあるし、とんでもなく恥ずかしかったりもするけれど、彼への愛しさや愛されている充足感を感じて、幸せで満たされる感覚もあって。ついでに言えば、最近は快楽もちゃんと拾えるようになってきていたりして。そんな自分の身体の変化に戸惑ったりもするけれど。

 それでもやっぱり相手が宗司である限り、この行為自体に嫌悪感を抱くことはないのだろう。


 そんなことを考えながらぼんやり宗司の顔を見ていると、どうした、と声を掛けられる。

 その顔も声もとても優しくて。


「……好き、……だなぁって」


 感情が零れ落ちる。

 一瞬呆けた顔をした宗司だったが、すぐに先程の優しさに愛しさも滲ませて微笑んだ。


「……ああ、俺も」


 二人だけの空間に漂う、事後特有の甘くて何処かしっとりとしていて、でもなんだかふわふわしているようなこの空気感に心地良さを感じつつ、いや感じるからこそ、今の自分の言葉に何処か物足りなさを感じて、少し呆けてしまう。

 そんな様子の廉は宗司からまた、今度は不思議そうに、どうした、と声を掛けられた。


「…………」


 まだぼんやりする頭で、何か答えなければ、と思うものの、ふさわしい端的な言葉は出て来ないし、だからといってつらつらと考えていたことを話すのも今は気怠い。

 どうしようか、と答える気が無いわけではないことを示すために、宗司から目を逸らさず考える。すると、そこから何か読み取ったのか宗司の方が得心が行った顔をして言葉を紡いだ。


「愛してる」


 その言葉はストン、と廉の内に落ちて。

 いつもであれば、顔を真っ赤にして、急に何を言っているのだ、等と照れ隠しの言葉を投げるであろうが、今はその言葉があまりに簡単に先程感じた物足りなさを埋めたことに、また呆けてしまった。

 でも、埋まった言葉はじんわりと廉の心の内を暖めていく。そうだ、自分が伝えたかったのは――。


「俺も。愛して、ます」


 こんなにこの言葉をすんなりと口にできるなんて。

 きっとそれは二人を纏うこの空気と溢れんばかりに自分の内を満たす幸福感のせい。

 おそらく、宗司も廉がこんな風に答えてくれるとは思わなかったのだろう。目を見開いて驚いていた。

 が、やはりそれもまた一瞬で、すぐに笑みを取り戻す。


 多分、今自分は宗司と同じように、嬉しさと愛しさと幸せを綯い交ぜにしたような顔で笑っているんだろう。

 それはきっととても素敵なことで特別なこと。

 今のこの時を噛みしめるように、ゆっくりと唇を重ねた。


Fin.